鬼系上司は甘えたがり。
「とりあえず泣き止め。んで、イルミネーションを見ながら俺の部屋へお持ち帰りされろ。5秒以内に泣き止まないと置いていく」
「……っ!」
「カウントダウンいくぞー、5、4--」
「わーわー!止めます!根性で止めますから意地悪しないでお持ち帰りしてくださいっ!」
けれど、主任ときたらこの通り。
慌てて涙を止めた私を見て満足そうに笑った主任の顔は、キラキラと輝くイルミネーションの光に照らされていて、いつになく格好いいのだけど、中身は相変わらずのドSだった。
今日がクリスマスということで、いつにも増して沢山の人たちが行き交う往来での醜態は、さすがの主任といえども恥ずかしいのだろうと容易に想像はつくものの、もうちょっと雰囲気のあることとか言えないものなんだろうか。
……いや、勝手に感極まった私がいけない。
ズビッと鼻を啜る。ちょっと虚しい……かも。
すると。
「よし、いい子。忠犬なのはいいことだ」
「犬じゃないですってば!もー!」
「うるさい、行くぞ」
「わわっ……!」
主任がいきなり私の手を取り、自分の方へグイと引き寄せたので、突然のことに体のバランスが一時的に危なくなってしまった。