鬼系上司は甘えたがり。
幸い今年のクリスマスは金曜日なので、多少遅れたところで時間はたっぷりある。
寂しく感じることなんて、あるはずもない。
それから約30分、午後8時を数分過ぎた辺り。
予想と全く同じ、白い息をハァハァと吐きながら急いで駆けてくる主任の姿を見つけた私は、自分からも主任に駆け寄り、首元のネクタイを乱暴に緩めながら申し訳なさそうに顔を歪める彼にフルフルと首を振って笑った。
「薪……悪い、遅れた……」
「いえ。ぐずっ……ありがとうございます」
「なんだよ、俺がお前のために走るなんて当たり前なんだぞ。そんなことでいちいち泣くな、どこまで可愛いヤツだよ、薪は」
「はい〜、すみません〜……」
主任はあっけらけんとした口調でそう言ったけれど、私のために走ってきてくれただけで、なんだかもう胸がいっぱいで、泣くつもりなんてなかったのに意に反して涙が出てしまう。
道の往来にも関わらず、グズグズ泣きはじめてしまったそんな私を「ばーか」と言いながら自分の胸に抱き寄せてくれた主任に甘えながら、めいいっぱい幸せを噛みしめる。
この人の彼女で本当によかった。
これが何よりのプレゼントだ。