鬼系上司は甘えたがり。
なんということだろう。
よりにもよって人通りも車通りも多い外の席をチョイスしてこようとは、この人、けっこうイジワルな性格をしているのかもしれない。
けれど正直に“奥平さんがイケメンすぎて私が女の子の視線に耐えられません”と言うわけにもいかず、またしてもニッコリと微笑んで「良かった」とホッと胸を撫で下ろす彼に改めて飲み物を聞かれた私は、おずおずと「……じゃあ、ホットココアを」と言うと、周りの視線に耐えうる精神を密かに鍛え直した。
「--で、ずっとお探しになっていたものですけど、こちらでお間違いありませんか?」
テラス席はやはり落ち着かなかった。
奥平さんに目を奪われ、次いで連れである私を見た女の子たちからの正直すぎる視線がチラチラと気になりつつも、彼がハンカチを丁寧に開いて見せてくれたそれに、私は込み上げるものを感じながら何度も何度も首を縦に振る。
ホワイトトパーズがあしらわれた雫モチーフのそれは、クリスマスに主任がプレゼントしてくれたものに間違いはなく、雫のお尻の部分から三連に連なるトパーズたちも、一つも取れることなく失くしてしまう前の姿を保っていた。