鬼系上司は甘えたがり。
「いえいえ、さっきも言いましたけど、噛ませ犬にもなれなかった俺に勝ち目なんてあるわけないじゃないですか。はは、嫌だなぁ」
「はん、どーだか。姑息な手で薪の心に揺さぶりをかけるような人の言うことなんて、ちっとも信用できないんですよ。……この腹黒が」
そんな中、ちょっと放心していた隙に主任と奥平さんの間にバチバチと火花が散りはじめ、そんな2人の近くで多賀野くんが一人、挙動不審気味にオタオタしている様子が目に入った。
なんとなく主任の方が優勢かと思っていると、しかしどっこい、奥平さんも負けていない。
「おっと、それは聞き捨てなりませんね。確かに俺は新田さんにそう言われても仕方のないことをしましたけど、告白だけは本心でしたよ? ペンダントトップもちゃんと返しました。それでも新田さんがまだ俺を疑うなら、いっそ渡瀬さんを永遠に自分のものにしたらいいじゃないですか。ウチのホテル、式場も結構凄いんですよ。挙式はぜひ当ホテルにお任せ下さい」
「……な、にを、どさくさに紛れて!」
「ふふふ。渡瀬さんのウェディングドレス姿、さぞかしお綺麗なんでしょうね。それとも白無垢ですか? まあ、どちらにしても、また俺がよからぬことを思いはじめる前に心配の芽は摘んでおくに越したことはないですね」
「……ッ」