鬼系上司は甘えたがり。
「おいおい、何を怖気づいてんだ。いつまでも俺におんぶに抱っこじゃ永遠に成長できないだろ。なにもすぐにと言ってるわけじゃない。さすがに俺もそこまでは鬼じゃないよ」
「……へ? ……あ、そ、そうなんですね」
「おう」
てか、自分が鬼なのは自覚済みなんだな。
いきなり一人で任されるわけではないのだと分かって、私は文字通りホッと胸を撫で下ろす。
その一方で、主任にも“鬼の目にも涙”的な優しい部分があるのだと知って、鬼も鬼なりに周りを見ているんだなぁと妙に感慨深く思った。
そういえば主任は、かなり口が悪いだけで、けしてワンマンな人じゃないもんなぁ。
……私にはワンマンだけど。下僕って損だ。
「さて、中に入るか」
「あ、待ってください」
主任から見て、下僕要素の観点において他の部下と私との違いって何だろう、と真剣に考えていたら、主任がスタスタと先を急いで歩いていってしまったので、私は慌てて追いかける。
手がかかる部下なのは私自身、大いに自覚しているけれど、だからといって下僕のように扱われるのは、なかなかいかがなものだろう。
私って、良くも悪くも扱いやすいんだろうか。