鬼系上司は甘えたがり。
 
どこに休む暇があるんだろうと不思議に思うくらい主任の仕事は幅も量もハンパではなく、実際に私も撮影現場や編集会議に参加させてもらったものの、終始場の空気に馴染めないまま、気づけば終わっていた、という感覚だ。


最初の1週間、主任と仕事をしてみて、こんなの人間が24時間でこなせる仕事の量じゃないって!と何度腰を抜かしそうになったことか。

スケジュール通りにいかないことなんてしょっちゅうなのに、それでもキッチリ期日までに完璧に仕上げる主任は、やっぱりハイスペック人間なのだと思う。……いや、やはりUMA?

部長も課長も、肩書きこそ“編集長”と“副編集長”として誌面に名前が載るものの、実質、この編集部を動かしているのは鬼神・新田真紘だ。

主任、恐るべし……。





それでも、誰にでも平等に週末はやって来る。

例のごとく主任から『甘えてやる』と謎のラインを受け取った金曜日、定時ちょっと過ぎ。

とりあえずだけれど仕事が片付いたので、久しぶりに映画館に行ってみようかなとルンルン気分だった私の心は、その瞬間、ポキリと折れた。
 
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