鬼系上司は甘えたがり。
「そうそう、社員旅行のときもさ、主任ったら夜の食事会で薪ちゃんにばっかりお酌させて、片想い中から関白宣言かよ!って私、近くの席から見てて笑いを堪えるのに必死で……っ」
「うぇい!?」
「バレンタインのときも、女子社員みんなで配った義理チョコ、薪ちゃんから手渡されたものだけずーっと持ってんの!あれ、勿体なくて食べられなかったんだよ。だから義理だって!」
「うぇいうぇい!?」
「極めつけはアレよ。前に薪ちゃんにしつこく迫ってたシステム課の小川さん!主任ってば、陰でこっそり小川さんに壁ドンして脅迫してたからね。あれは主任の執念を感じたわ〜」
続々と由里子の口から語られる新事実に次ぐ新事実に、もはや開いた口は塞がりようもない。
付きっきりでお酌させられていたときは、不満に思いつつも下僕だから仕方がないと諦め、お酒が入って益々ドS発言に拍車がかかっていく主任に愛想笑いをしながらつき合った。
バレンタインのときは、じゃんけんに負けて主任にチョコを渡すことになり、恐怖に慄いた。
システム課の小川さんになぜか執拗に迫られていたときは、ある日それがパタリと途絶え、やっとご乱心が解けたんだなぁなどと、突如戻ってきた平穏を神のご加護と感謝したものだ。
あれは主任の仕業だったのね!?