夢が繋げた未来~何度倒れても諦めないで~
「おい高瀬!」

「高岡くん……?」


さっきまで泳いでいたはずの高岡くんがいつの間にか私の目の前に立っていた。
しかも怒っている?
眉を顰めて両手を腰に当てる高岡くんはいかにも怒っていますオーラを出していた。


「どうしたの?」

「どうしたの?じゃねぇよ!
どれだけ腹筋してんだよ!?ペース考えろよ!」


わあ、本当に怒っている。
高岡くんを見上げていればハァっと盛大なタメ息をされた。


「……体力ねぇんだから無理してんじゃねぇよ!」


体力がない?無理をするな?
その言葉がナイフの様に私の胸を突き刺した。


「それによー。
そろそろ本格的に泳ぎだそうぜ!
部活後に泳げるなら今でも……」

「……さい」

「あ?」

「うるさい!」


私は部活中にも関わらず叫んでいた。
それには高岡くんだけじゃなくて部員の皆も先生も驚いた様に動きを止めていた。

高岡くんが私の事を思って言ってくれているのは分かっている。
彼に比べたら体力がないのも本当の事だし言い返せない。
だけど。


「私だって……泳ぎたいよ……」

「高瀬……?」

「高岡くんには分からないよ。
泳げない人の気持ちなんて……」


泳ぎたいけど上手くいかないの。
ブランクもそうだけど心のどこかに過去を引きずっている自分がいる。
あんなに綺麗な泳ぎが出来る高岡くんに私の気持ちなんか分かりっこない。


「どうしたんですか2人とも?」

「いや……別に何でもないっす」


先生が私たちに近付いてくる。
それを高岡くんが明るく振る舞ってくれている。
私が悪いのは分かっている。謝らなければいけない事も分かる。
でも。

“ごめん”のひと言が出ない。


「高瀬さん?」

「すみません……私……頭冷やしてきます」


私はタオルを手に持ちプールを後にする。


「なにしてんだろ……」


女子更衣室に戻った私は力なく床に座り込んだ。


「完全に八つ当たりじゃん」


高岡くんは何もしてないのに自分の不甲斐なさに腹が立って怒鳴り散らしてしまった。


「本当に……馬鹿みたい……」


震えた小さな声が更衣室へと消えていく。
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