夢が繋げた未来~何度倒れても諦めないで~
「高岡くんの事も三井先生の事も、私がそうしたいからそうしただけ」


そう言って笑えば高岡くんはタメ息をつく。


「やっぱお人好しだわ」


そしてフッと笑うと高岡くんはゆっくりと頭を下げた。
いきなり頭を下げられた私はポカンと口を開けて固まった。
言葉が出せたのは数秒後だ。


「ちょっ……高岡くん!?」

「ありがとう」

「え!?」


何がありがとう?
戸惑っていれば高岡くんはゆっくりと話してくれる。


「俺の代わりに大会に出てくれて」

「だから私は……」

「それと……今回の事で分かった。
……泳げない事がどんなに辛いか」

「……高岡くん……」


高岡くんは顔を上げて真っ直ぐに私を見た。


「泳げる事がいつの間にか当たり前になっていた。
泳げないってだけで、胸が痛くなって変な焦りが支配しだす。
2度と泳げなくなったらどうしよう、怪我が治ったら俺は今まで通りに泳げるのか。
不安ばかりで希望なんてなかった」


彼は哀しそうに笑いながら言った。
そんな素振は表には出していなかったけど不安だったんだ。
苦しくて辛いのに、1人でその想いと闘っていたんだ。
そう思うと胸が苦しくなる。


「お前の言う通り俺は何も分かってなかった。
なのに偉そうな事を言ってお前を傷つけた」


高岡くんの言葉に私は前に自分が言った言葉を思い出した。

『高岡くんには分からないよ。
泳げない人の気持ちなんて……』

あの時は私も自暴自棄になっていた。
だから高岡くんに酷い事を言ってしまった。
何も言えずに自分の服の裾をギュッと掴んだ。


「それなのに……お前は俺を責めるどころか……謝って……」


高岡くんは哀しそうに笑う。


「自分を犠牲にしてまで俺の為に泳いでくれた」

「別に犠牲になんて……」


犠牲になんてしていない。
私は平泳ぎで大会に出た事を後悔なんてしていない。
むしろ感謝をしている。
< 155 / 362 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop