夢が繋げた未来~何度倒れても諦めないで~
「俺は悔しさに耐え切れずに逃げ出したが。
お前は悔しさから逃げずに受け止めたんだ。
その悔しさをバネに次を見据えて進化しようとしていた」


その言葉を聞いた瞬間に、私と先生の顔に笑顔が浮かんだ。
自分で答えを見つけたみたいだね。
もう、大丈夫。
高岡くんは、きっと。
もう誰にも止められないくらいに凄い選手になるだろう。


「俺もきちんと受け止める。
だから、一緒に闘ってくれないか……?」


震える拳がゆっくりと前に突き出される。
不安そうに私を見つめる彼に呆れる様に笑った。
不安がる必要なんて何処にもない。
だって。


「そんなの当たり前じゃん!」


言葉と同時に自分の拳を高岡くんにぶつける。
コツンといった音と一緒に私たちは笑い合った。

迷って、迷って。
彼は自らの手で答えを導き出した。

それは普通の事かもしれないけど。
本当は凄い事なんだ。
答えを見つける事は、沢山の勇気がいるし、覚悟だっている。
それが出来るんだから高岡くんはやっぱり凄い人だ。


「高瀬、ありがとう」

「え?」

「お前の泳ぎ、胸にガツンときたわ。
悔しさがお前の泳ぎに更に熱い魂を吹き込んだんだな」


嬉しい事を言ってくれるな。
私の泳ぎが、高岡くんの為になったなら嬉しい。


「ふふっ。そうかもしれないね。
でもお礼を言う相手は違うんじゃない?」

「え?」


高岡くんはキョトンと目を丸くさせる。
あ、そっちの意味は分からなかったか。
そう思いながら私は苦手な言葉で説明をする。
< 205 / 362 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop