ターゲット
紗英は、本人に聞こえる大きさで悪口を言い出した。
「聞こえてるならさ、早くどけばいいのに。
なに?もう、鬱陶しい。」
私は「静かに。」と注意した。
「なにを探してるの?」
「…………ワタシの教科書」
ボソッと呟くような声。
「数学の?」
「…うん」
「…………知らない?」
「…ごめん、知らない。」
「そう。」
スッと私たちの横を通り抜け、自分の席に座った吉野さん。
…杏珠らの仕業かな?
「嫌な感じー。」