感情方程式。

-奏太side-

ずっと、彼女が気になっていた。
朝、平気で遅刻してくる姿。
自習監督で行けば彼女は居なくて。
そして有名な家柄でもあって。
この子は絶対何かを抱えてるんだろうなと、そう思い始めたその何日か後にこうして会話が出来る日々が続いて。

俺って単純。

少しずつ好きになっちゃってるよ。
立場とか本当どーでもいいー…。
何でこうして抱きしめちゃってんだ。
全部、笑えてきちゃうよ。


「…何笑ってるんですか。」


あ、菊池さん敬語だ。
彼女が敬語になる瞬間は困っている合図。
自分が気持ち悪く感じてきて仕方ない。

「今日の帰り送ってあげる。だから帰らないで。」
「正気…ですか?」
「まぁ遅く出ればいいんだよ。」

タイミングはいつでもある。
それに俺の中では送って行きたいという気持ちが前からあった。
どうしてかはわからないけれど、今日はどうも我慢できそうになかった。

少し、腕の力を緩めて彼女の顔を見るとやはり困った顔をしていた。
顔を少し近付け、口付けしようとする自分がいる居た…だがその感情は堪えて、彼女の額に自分の額をくっ付けた。

「あ〜〜〜…」
「さっきから質問に答えなすぎ…」
「……俺も色々あるんだよ」
「だからと言ってこの状況はありえない、です。」
「そうだよね、ごめん。」

これはワガママだ。
自分の感情を押し付けるだけの行動。
やっとの事で俺は菊池さんを解放した。
だけど彼女は困った顔をこっちに向ける。



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