オフィス・ラブ #3
新しいPCのセッティングが、ようやく終わった。
別にメカ音痴ではないと思うけれど、やっぱり得意じゃないなと感じる。
メーラーとデータベースの設定を移行すると、マーケのエンジニアから新着メールがあった。
これまでのご協力に感謝します、という内容の丁寧なメールで、かえって恐縮した。
これで、アドテクとの縁も、切れてしまった。
月末は忙しい。
月内に実施した案件の請求額を決定し、請求書を発行してクライアントに提出する。
特に今月は期末でもあるので、額の決定には先方も慎重で、なかなか神経を使った。
企業の会計法も急激に厳しくなる中、露骨な予算のスライドや、期をまたいだ支払いなどがタブーとなってきている。
念入りにクライアントと話を詰め、請求書に落としこむところまでいったのは、もう本当に月の最後の日だった。
打ち合わせのついでに請求書を届けて、先方の会社を出た時には、日が暮れていた。
もうひと働きくらいはしたいけれど、気力も使い果たしていたので、直帰しようと携帯を取り出すと。
新庄さんからメールが来ていた。
何時に終わる? という、いつもの内容。
私は返信して、一度会社に戻ることに決めた。
先に乗っていた新庄さんが、エンジンのかかった運転席で電話をしていた。
窓をノックすると、目を上げてロックを解除してくれる。
乗りこむと同時に電話は終わり、目を合わせる間もなく、抱きあってキスをした。
新庄さんの転居は、今週末に迫っていた。