オフィス・ラブ #3
部の全員で一斉にクライアントを訪れるのは、珍しい。

みんなで昼食でもとろうか、という話になったところで、課長と堤さんが、先方の部長に呼ばれた。


廊下とオフィスの境で、少し3人で立ち話をすると、堤さんが手振りで、私たちに先に帰るよう指示をする。


ちょっと、ただごとでない雰囲気のように見えたけれど。

何か、あったんだろうか。





金曜日の今日、新庄さんは一日休みをとっているので、迎えに行くと言ってくれた。

もう、土日に出社する覚悟で、きりのいいところで仕事を切りあげる。

今日ばっかりは、仕方ない。


ほとんど走るようにして駐車場に行くと、新庄さんが車をアクセサリ状態にして、ナビをいじっていた。



「何、見てるんですか」



乗りこんで、画面をのぞいてみる。

地名からして、大阪だ。



「どのくらいかかるかと思って」

「7時間、超えるんですか…」



電車では、せいぜい3時間半なのに。

実際に新庄さんが運転すれば、これよりはずっと短時間で着くだろうけど。

それでも、交代要員もない中、けっこうな長旅だ。


ふう、と息をついて、新庄さんが背中をシートに預けた。



「長くなるようなら、向こうに駐車場を借りたいんだよな」



その言葉に、少しぎくっとした。

新庄さんの思う「長く」って、どのくらいだろう。


エンジンがかかり、ナビが再起動して。

遠い西の地は、画面から消えた。

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