オフィス・ラブ #3

顔を洗って、部屋着に着替えて、寝室をそっとのぞくと、新庄さんはすでに寝入っていた。



「眠い」



話している最中に、ぎくっと固まったかと思うと、突然そう言い出したのだ。


新庄さんは、限界まで動いて、電池が切れたように眠るので。

彼が「眠い」と言い出したら最後、どうやったってそれ以上起こしておくことはできないと、私はこれまでに学んだ。

けど、元から睡眠をそんなに必要としないらしくて、めったに言うことはないのに。



「環境が変わって、お疲れなんでしょう」

「そうかな…」



いかにも充電切れといった様子で、煙草をくわえてじっと考えこむ。

この眠気は、本人にとっても唐突に訪れるらしく、タイミングが合わないと、こうして不本意そうにしていることがある。



「今日は、ゆっくり休んでください」



明日も泊まらせていただくし。

そう言うと、うん、とけだるい返事とともに、私の肩に片腕をかけて、緩慢なキスをくれた。


その体温が高い。

これはもう、寝る寸前だ。


名残惜しそうなキスに、笑ってしまう。


私だって、まだしたいことがある。

そんな思いをこめて首に腕を回すと、新庄さんも小さく吹き出して。

煙草を灰皿に置いて、改めて、両手で優しく髪をかき回しながら、ゆっくりと甘ったるいキスをくれる。

けれど、ダメだ、と途中であきらめたように笑って、離れた。



「気がゆるんだかな」



顔、見たら。


先ほど置いた煙草を消しながら、眠たそうにそう言うのに、涙が出そうなほど、胸が熱くなる。

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