恋の魔法
風呂あがりのビールは旨い。


真夏はもちろんだけど、まだまだ肌寒い時期、程よく暖められた室内で飲み干す一杯はこれまた最高だ。


しばしその味を堪能した後、俺は上機嫌でケータイを手に取ると、すでに登録されている『それ』を表示させ、「チチンプイプイ♪」とか言いながら【発信】ボタンを押した。


魔法をかける際の、お約束の呪文といったところか。


全然可愛くない声だけど。


浮かれてはしゃいで、何だかバカみたいだけど。


部屋に一人。


誰も見ちゃいないんだから、別にかまうこっちゃない。


『もしもし~』


10回近くコールしてから、ようやく相手が出た。


こちらはとてつもなく可愛らしい声。


「あ、わ、わたぬきっ!?」


俺は自分でも『こらこら落ち着きたまえ』と諌めたくなるようなポテンシャルの高さで相手にくらいついた。


『うん。どーしたの?麻宮君』


「いや、特別用はないんだけど…。綿貫、いま何してるのかな~と思って」

『えと、リビングでくつろいでる』

「へぇ~…。ご家族もそこにいるの?」

『ううん。お父さんとお母さんは寝室に行っちゃった』


だろうな。


現在、時刻はすでに深夜12時を過ぎている。
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