イジワルな君と私との恋愛事情

中臣くんside2

「彰吾。今日はありがとうな。付きあってくれて。」

『春名先輩』の電話は、『新しい服を買いたいので付きあってくれ』。

と、そういうものだった。

緊張して、電話に出た俺は、それを聞いた途端、一気に脱力した。

やっぱり、『春名先輩』は、前とどこも変わっていない。

喜ぶべきなのか?

それとも、悲しむべきなのか?

俺には、さっぱり分からなかった。

あんなことを言っておいて、この人は‥‥‥‥。

う〜ん。

俺がそんな風に考えていた時、急に春名先輩が言った。

「なぁ、彰吾。俺もお前のことを『ショウ』って、そう呼びたいな。」

普段とは違う、悪戯っぽい笑みを浮かべて、甘えるような感じで‥‥‥‥。

「えっ!?」

俺は、びっくり顔をして、そんな春名先輩を見つめた。

ドキンッ!

俺は、そんな春名先輩に、ときめいてしまった。

「えっ!?‥あっ、あの‥‥‥‥?春名先輩‥‥‥‥?」

春名先輩は、そんな狼狽えた様子の俺を見て、クスリッと笑うと、

「だって、俺たち、もう『付き合ってる』んだろう?だから、『ショウ』って呼んでもいいじゃないか。」

春名先輩は、しごくあっさりと、そう言った。

俺は驚いた。

いつの間に『俺と春名先輩』が付きあってることになってるんだ?

確かに俺は、春名先輩が好きだ。

だけど、俺はまだ、『あの時の返事』をしていなかった。

「‥ちょっ、ちょっと待って下さい!『俺たち』は、まだ付きあってるというワケでは‥‥‥。


俺がそう言うと、春名先輩は、

「違うのか?そうかぁ。俺、てっきり、無言の肯定が『俺の告白の返事』だと思ってたんだけどなぁ‥‥‥。」

いつもの笑顔を見せると、そう言った。

その言葉にその笑顔は、反則だろう?

俺は、そう思った。

だって、春名先輩にそう言われたら、俺は、反論できないじゃないか‥‥‥‥。

「俺たち、付きあってるんじゃないのか?」

もう一度、春名先輩がそう言った。

しかも、俺の手を繋いで、恋人繋ぎをしてきた。

俺は、顔を真っ赤にして、ようやく観念して言った。

「付きあってます!」

「オッケー!ショウ、俺のこと、『高行』って、そう呼んで。」

春名先輩は、にっこり笑って、さらなる要求を‥‥‥‥。

この人は‥‥‥‥。

でも‥‥‥‥。

「いやいや!それは、絶対無理です!!」

俺は、それだけは断固拒否した。

そんな風に、春名先輩のこと、呼べるわけないじゃないか。





< 31 / 42 >

この作品をシェア

pagetop