イジワルな君と私との恋愛事情

結side3

その時、私は思い出していた。

高ちゃんに雪間くんの財布を手渡して、買いに行ってもらったことを……。

(あのまま、雪間くんの財布、高ちゃんに預けたまま、教室に戻ってきちゃったんだった。)

私は、自分のあまりのマヌケさに呆れ果てていた。

だから、雪間くんには素直に謝ろうと思った。

だけど、雪間くんは、

「お前のドジのおかげで、あいつに『借り』ができちまったじゃないか。どうしてくれるんだよ!」

チッと、舌打ちしながら、雪間くんがそう言ったので、

「ドジって……。だって、これは不可抗力でしょう?そんな風に言うなんて……。」

そこまで、私が言った時、

「梶、いる?」

綺麗なソプラノ声が、雪間くんを呼ぶ。

「瑠璃さん。1年の教室に何の用だよ?」

雪間くんは、苦虫を紙屑したような顔で、声の主を見やる。

「相変わらずねぇ、梶。また、結ちゃんのこと、イジメてるの?そんな子供っぽいことはやめなさいよ。」

雪間くんをたしなめるように言う。

「説教かよ?そんなの聞きたくない。」

雪間くんは、心底、嫌そうな顔をした。

雪間くんが、『瑠璃さん』と呼んだ人は、高ちゃんの同級生の浅葱瑠璃子【あさぎるりこ】さんこと、『瑠璃センパイ』。

私は、そう呼んでいる。

雪間くんのいわゆる『幼なじみ』。

あの、雪間くんが、唯一、頭が上がらない人だ。

優しくて、さっぱりとした性格の超美人なので、男子たちに絶大な人気を誇り、女子生徒にも人気がある。

「梶、高行から聞いたわよ。また、結ちゃんをパシリに使ったんだって?そんなこと、もうやめなさいよ!」

「お前、あいつにチクッてるのか!?」

と、雪間くんが、非難する目で見てくる。

「それは、あんたが悪いの。」

そう言うと、瑠璃センパイは、雪間くんの片耳を引っ張った。

「…いたたっ……!!」

「梶、反省した?」

瑠璃センパイは、雪間くんにそう聞く。

「…分かった……。分かったから、離せって……。」

雪間くんがそう言うと、瑠璃センパイは満足気な顔で、

「よしっ!!」

そう言った。

(やっぱり、瑠璃センパイは、すごいなぁ。私は、雪間くんにあんなこと、できないや。)

私は、心底、感心していた。













< 4 / 42 >

この作品をシェア

pagetop