花のかほりは君の香り
1話
「甘くていい香り……ミカエル、この花は  なに?」


「この花はキンモクセイといって
 花言葉は謙虚・陶酔・真実の愛……
 木下灯(きのしたあかり)まるで貴女の
 ような花ですね。」


「な、な、なんで私!?
 全然意味がわからないよっ」



「威勢が良いわりには小さくて可愛らしく
 そして、儚い…」


「か、かわっ!?
 誉めてるのかからかってるのかよくわか
 らないしっ……」



突然、自分を花に重ね合わされて動揺してしまい、つい不機嫌な声を出してしまったが、彼は全く動じていなかった。



「フフッ…少し意地悪でしたか?」


「ってゆうか、どう反応すればいいか
 わからないし……」



彼の透き通るようなグレーの瞳を見てしまうと、なにもかもが見透かされてしまうような気がして、私は恥ずかしい気持ちを隠すように俯きながら話すと、ふいに彼の端正な顔が近づき耳元で語りかけてきた。



「君のそおゆうところが僕を官能的な気分
 にさせる。だから、貴女はキンモクセイ
 なんですよ……この香りを知ってしまった
 ら忘れられないように……」



耳をくすぐる吐息に柔らかく長い白銀色の髪に頬を撫でられ、脚の力が抜けていきそうになりながらも、私も彼に精一杯の告白をしてみた。




「それなら…私にとってミカエルもキンモク
 セイ…だよ…」


「フフッ……貴女の口からそんな言葉が出る
 とは思わなかった。頑張りましたね。
 嬉しいですよ。」


「だって…もう会えないかもしれない
 から……」



ミカエルの大きな手が私の頬に優しく触れゆっくりとお互いの唇が重なりあった。



「いつも貴女を想っています…
 忘れないで…」



「…また会えるよね?」



「悲しまないで…
 必ず会いに行くから…」






















 けたたましいアラームの音で目を覚まし、先程まで見ていた夢は煙のように私の記憶から消えていった。



秋になると布団から出るのが少し億劫になる。

少し身震いをしながら学校へ行く支度を済ませてリビングへ向かった。


「おはよう……………?お母さん?
 あ、今日は夜勤って言ってたっけ…」


数年前、両親が離婚してから母は女手ひとつで私を育てている。


あまり干渉される事のない生活は楽ではあったが、こうして一人で朝ごはんを作って食べていると孤独に押し潰されそうになる。



「行ってきます…」



誰もいない部屋にに声をかけ、私は家を飛び出した。








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