浮気者上司!?に溺愛されてます
誤魔化せない真剣宣言
部内の片隅にあるフリースペースのテーブルを四人で陣取って、私は斜め前に座っている恭介をバレないように窺い見た。
彼の隣、私の真正面には羽村さんがいつもと変わらず真面目腐った表情を浮かべている。


「報告遅れてました、例の競争入札の件なんですが……」


そう切り出したのは、恭介の向かい側の高津だ。


定例会議で恭介から求められた進捗状況をその次の会議で出来ず、恭介……というより羽村さんの逆鱗に触れて、改めてミーティングという形になったのだ。
そして私は高津に頼まれた記録係だ。


「すみません……。桜庭課長の指示通り、大学時代の恩師に紹介してもらって、宇宙工学専門の教授にコンタクトを取っていたんですが……」


高津の声が微妙にゆれて曇った途端、羽村さんが鋭い視線を向けるのが私にもわかった。
恭介は黙ったまま配られたレジュメに目を通している。
その空気だけで、高津が完全に怯んでいるのが隣の私にも伝わってきた。


実は、高津も、ちゃんと会議で報告する準備は出来ていたのだ。
最後まで交渉を諦めなかった結果、報告が遅れてしまったということを、私はちゃんと知っていた。


上司にいい報告をしたい、と高津が気張った結果だけど、残念ながら高津が期待した返事を得ることができなかったのだ。


「実は……他社からも共同開発の申し出を受けていたらしく、今回はそっちに……」


高津が俯いてそう報告した途端、羽村さんの怒号が響いた。


「報告も遅れた上にその結果!? と言うか、あれから二週間もあったのに、コンタクトしたのはその教授一人だけだと言うの!?」
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