一夜くんとのアヤマチ。
「…はぁ…」

一夜くんが浴びているシャワーの音を聞きながら、私は一人、ソファーでため息をついた。

「…何てバカなんだろ、私…」

聞いちゃいけないと分かっているのに、聞いてしまった。しかも、何の答えも得られなかった。

「…嫌われたかな…」

うん、多分嫌われた。でも、それは私のせい。一人で勝手に好きになって、一人で勝手に嫌われて。それだけの些細なことなんだ。

「ふぃ~…」

お風呂のドアが開き、一夜くんが上がって来た。脱衣所のドアも閉めているけど、今は何故か、私のことを全部見られているような気がした。

「一夜くんでも着れそうな服、探してそこに置いておいたから。着ていいよ」
「分かりました」

ドア越しに聞こえる返事も、私の耳にダイレクトに聞こえたような気がした。

「日向先生」

耳元で声がした。思わず後ろを振り向いてみたが、誰もいない。

「一夜くん?」

再び前を向いたその瞬間…私は、一夜くんに抱きしめられていた。

「日向先生…」
「か、一夜くん!?」

シャンプーのいい匂いが鼻の周りに漂う。

「全部、聞いてました。…俺、先生のこと嫌いになんかなりませんよ」

胸がきゅんと、狭くなったように感じられた。まぶたが熱くなり、気がつくと、私は泣いていた。
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