一夜くんとのアヤマチ。
「…変わってないね、一夜は…」

雪月ちゃんがクスクスと笑う。

「昔から変に熱くなる所とかさ、本当、全然変わってない…」

せき込んだ雪月ちゃんの口からは、とうとう血さえも流れていた。

「雪月! …もういい、喋るな…」
「いいの」

雪月ちゃんは、何かを…そう、「何か」を、悟ったようだった。

「…喋れるうちに…色んなこと、いっぱい喋っておかないと…」

この時一番つらかったのは、雪月ちゃんで間違いない。でも当の雪月ちゃんは、涙を一滴も流していなかった。代わりにベッドのシーツを濡らしていたのは、一夜くんと私の涙だった。

「…もうすぐ救急車来るからね。苦しいだろうけど…ちょっとだけ、我慢しててね…」
「大丈夫ですよ、先生…。私…こう見えても結構、我慢強いですから…」

我慢強い雪月ちゃんが、こんなに苦しんでいる。雪月ちゃん自身は私達を安心させたくて言ったんだろうけど、むしろ逆効果だった。

「…そうだ、一夜…」

何かを思い出したように、雪月ちゃんが言う。

「こんな時に言うのもおかしいかなって思うんだけどね…」

だんだん呼吸も不安定になってきていた。でも、雪月ちゃんは力を振り絞って、私達と話していた。

「私…一夜のこと、好きなんだ…」
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