~Lion Kiss~
銀座の日本料理店を予約していたけど、時間はとうに過ぎ、二時間経っても治人さんは帰ってこなかった。

さすがに、もう待っていられない。

私は玄関へと脚を進めた。

早く治人さんに会いたかった。

その時、ガチャリと玄関ドアが開いた。

「治人さん……」

全身の緊張が解けていく感覚に、私は大きく息をついた。

良かった、無事で。

「お帰りなさい……心配しちゃっ……」

すぐに私は彼の異変に気がついた。

……酒臭い。

「治人さん……」

治人さんは唇を引き結んで私を見下ろしていた。
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