君とのキスの意味
唇を、キュッと噛んだ斉藤。

「私の気持ちは、絶対にほのかに気付かれちゃダメだと思った。この恋心は、私だけの秘密。そんな風に抑えてれば、いつか消えてなくなるかも!そんな期待もしていた。でも、抑えようとすればするほど、膨らんでくるようで・・・こっそり塚本君の姿を探しながら、ツラかった」

「・・・」

「そんな時、ほのかの家が引っ越す事になって。会えなくなる前に、ほのかが塚本君に気持ちを伝えるって言ったの。ほのか、がんばれ!て気持ちと、今まで告白されてもずっと断り続けてきた塚本君だから、大丈夫かもとか」

斉藤は、小さく息を吐いた。

「“ 大丈夫 ”なんて思っちゃった。ほのかの想いを、一番知っているのは私なのに・・・ほのかが塚本君に告白して、涙を流して、許せない!て怒っている自分と、ホッとしている自分。なんだかもう、心の中がぐちゃぐちゃで。そんな混乱した気持ちを、そのまま塚本君にぶつけたの。『好きです』て言えないかわりに、塚本君を突き飛ばしたの」

あの時の斉藤は、怒っているような、泣いているような顔をしていた。斉藤の心の中、そのままが出ていたのかもしれない。

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