ベイビー クライ

拷問…?
脈絡のない言葉に、初めは首を傾げるばかり。
すると、突然肩に、重力を感じた。先生の体がのっしりと、覆いかぶさってきた。


「先生、ちょ…っ、重」
「待たね。これからは、今までの分も全部、込めてやるからな」


必然的に、耳元で囁かれた言葉に心臓の動きが速くなる。先生の匂い、先生のぬくもり。

こんなに隙間なくくっついていたら、ずっと浸っていたくなってしまうよ


「……地元に戻っても、また、会えますよね?」


このぬくもりを、置き土産にするつもりですか?

次はいつ、会えるのかな。どのくらいのペースで会える?

私は受験生だし、遠距離になる。
今はこんなに身近に感じても、いずれ恋しいさに打ち拉がれる日々がやってくる。
すぐに。


「最後のレクチャー、な?」


体を放した先生は、あたしの両肩に手のひらを乗せ、顔を覗き込む体勢をとった。
その目が、心ばかり、笑いを帯びているように見えるのは――?


「俺の地元、って、この町なんだけど」
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