密室の恋人
遅れて、千尋お気に入りの店に行くと、店の木の前に誰かが立っていた。
弥のようだ。
「上村さん、どうかしたんですか?」
と訊くと、
「いや、凛子ちゃんが迷うかと思って」
と言う。
「迷いませんよ、いつも来てるじゃないですか」
なんでわざわざ待っててくれたんだ? と思っていると、弥は、
「凛子ちゃん、ちょっと、ちょっと」
と凛子の手を引き、他所へと引っ張っていく。
既に大宴会と化している明るい店内。
窓際に座る千尋がこちらを振り向いた気がしたが、気のせいだったか。