密室の恋人
夢の中。
蒼汰はあのエレベーターの中に居た。
誰も居ない。
「……陸人?」
あの日、陸人が胸を押さえ、しゃがみ込んでいた片隅に向かい、そう呼びかけてみる。
「陸人」
陸人の気配がなかった。
このエレベーターの中でいつも感じていた、自分を見張っているようなあの陸人の視線が。
「陸人っ」
なにか嫌な感じがしていた。
陸人の気配どころか、外にあるはずの人の気配も感じない。
このエレベーターが完全に世界から遮断されているような。
「陸人っ、凛子っ」
叫んでも誰も来ない――。