僕はそれでも恋をする
「ナギー体育行くよー」
小さな戦闘中の私にそう声を掛けたのは、桜文花ちゃん。
名前はあやかだけど、皆には「フミちゃん」と呼ばれている愛されるお姉さん的存在。
もちろん、私のお姉さんでもある。
「待ってフミちゃん! 私の戦闘着が華麗に消えているの!」
「はぁ? 戦闘ごっこは良いから早くしなさい。遅刻するよ」
「ごっこじゃないの! 本当に体操着が無いんだよ!」
これってまさか、盗まれた!?
「柳瀬の机の上に置いてるの、あんたのやつじゃないの?」
……え?柳瀬君?
バッと振り返れば、柳瀬君の机の上には私の体操着袋が。
「!!!? な、なんでこんな所に!?」
と、というか、柳瀬君……?
「柳瀬君て……?」
朝、校庭で見たあの天使……の名前?
「柳瀬春人、同じクラスの人間くらい名前覚えてやんなよ」
私の思考回路が停止した。
「@#❥★✡✩!?」
あの天使が私と同じクラス…!!!?
嘘……この2週間、全く気付かなかった。
「最低ね、あんた。好きな人が同じクラスなのも知らないなんて。ほら行くよ」
「いやだってほら、私席一番前……て、」
す、すすすす好きな人!!!!!?
「フミちゃんそれは誤解だよ!! 私あの子知らないもの!!!!」
今日初めて喋ったし!!
「なんだ、好きじゃないのか」
フミちゃんはたまに恐ろしい冗談を言う。
私は好きな人なんて、生まれてきて一度しかできたことない。
それも、小学生にあがったばかりの幼稚な頃の話。
そんな私が突然恋心に目覚めましたなんてどこの漫画の話だろう。
うん、私はそう簡単に人を好きにはならないんだ。
フミちゃんはちょっと抜けてるだけなんだ。