僕はそれでも恋をする
「ふええ疲れたぁ」
今日の体育は運動音痴の私を殺しに来てる。
この時期にマラソン練習だなんて、ここは何かの組織なの?
「死ぬ……」
「あんた体力なさすぎ」
「フミちゃんは化け物すぎるの!」
フミちゃんはソフトボールを子供の頃、子供会でやっていた。
中学に入ってからはテニス部に入っているけど、体力が私の10倍はありそう。
本当に凄い化け女なんだ。
「渚あとで表でろ」
「!? な、なぜかなぁ〜?」
「早川! そんな所に座ってないでもう1周走りなさい! あんた一番遅れてるのよ!」
フミちゃんと喋っていると、体育の溝川先生がギロりとこちらを睨んできた。
……う、怖い。
仕方ない、嫌だけど走らなきゃなぁ……、あ。
立ち上がり、いざ走ろうとした時、走り終えたのであろう柳瀬君と視線が交わった。
体操着の袖口で汗を拭いた柳瀬君が、口パクで「がんばれ」と。
私の時間が一瞬止まったような気がした。
まるで、朝の――――。
「あぁぁぁぁ!! もう走ってやる! わ、私だってやれば出来るんだもんね!!」
なんて子どもみたいな誤魔化し方なんだろ。
「よーし、頑張れ渚。あんたなら走れるよ」
「……うん! ありがとうフミちゃん!」
私、頑張るよ……柳瀬君!