白と黒のコーヒータイム

違う視点で

国見が働いているのは百貨店、販売部に所属している国見は子供靴売り場の担当として売り上げを伸ばしていた。

いまは朝の通勤時間、横でエレベーターを待つ人物は偶然にも名村で昨夜のデジャヴかと少しげんなりする。

販売促進部、名村徹平。

首から提げられた社員証に付いている顔写真は数年前に撮ったものだが随分と若く見えた。

それは入社してから名村がどれだけ苦労して成長してきたかを物語っているのだが、全てを褒めるのはどうも悔しい。

昨日は散々に経験値の差を思い知らされ打ちのめされたのだ。

同じ年なのにな、同期なのにな、そんな意味の無いことを呟いては自分の乏しさを再確認するだけ。

「なんだ国見、視線が痛い。」

「…これは失礼。」

チラチラどころかガッツリ観察していた自分が悪いが、他に言い様がないものかと苛立ちも覚える。

名村は完全に仕事モードになる前の微妙な状態だからか、背筋を伸ばした立ち姿にも少し気怠さを感じた。

それに引き換え自分はただ何も考えずにぼんやりと立っているだけだ。

「シャキッとしろよ。」

背筋の伸びない国見に呆れたのか半ばため息交じりに名村が呟く。

「…名村は朝から爽やかだね~。」

「ああ?」

「社外の人と仕事をするからかもしれないけど…印象は凄くいいよ。これで口が悪くなけりゃ完璧なのに。」

負けじとため息交じりに返してやると名村は不思議そうな顔をして黙ってしまった。

一体何を言っているんだ、おそらくそういったことを考えているに違いない。

朝から僻みじみたことをいう自分の卑屈さに苦笑いを浮かべるが、大きな原因は寝不足だと納得させる。

結局遅くまで話し込んで帰り時間が想定以上になってしまったのだ。

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