白と黒のコーヒータイム
成程、サンプルだとか物騒な言葉を使ってしまっているがつまりは内緒で力を貸してもらっているのだ。

自分の勝手な物差しで他人を測ろうだなんてなんておこがましい。

そう思い、うんうんと頷いているとまた真柴から容赦のない言葉が聞こえてきた。

「いえ、そんなの黙ってれば分からないのでいいんですよ。これは国見さんの為です。」

最後の言葉は意外だ。

「私の為?」

「はい。名村さんと比較していると…他の好きな人を見付けるどころかその内に名村さんを好きになってしまいますよ。」

可愛い顔をした真柴がまたも耳を疑いたくなるような言葉を発信した。

「え!?…いやいや、今まで散々言ったけど名村には長く付き合ってる光希ちゃんって彼女がいるんだよ!?」

「だからですよ。好きになっても障害が多すぎます。それにこれだけ長く時間を共有して名村さんを好きになっていないなら、名村さんにない何かを持った人じゃないと国見さんは恋をしないんじゃないかと思って。」

何だその考え方は。

予想もしない角度からの考えに国見は言葉も無くただ目をぱちぱちと瞬きを繰り返した。

こんな考え方したことない。

「だから判断材料のサンプルとして名村さんの特性をお借りするだけです。」

「なんか…話がすごいことに…。」

国見は真柴の考えを否定するつもりは無いと分かったのか、真柴は満足そうに微笑むと少し身を屈めて下から見上げる様に国見を見つめた。

同性でもドキリとさせるその仕草はまさに真柴マジックだ。

「仮説からの実験はやってみて損がないですよ?何事も経験です。それに仮説をたてるにはまず観察しないと。」

ただし言っていることは小難し系、耳慣れない発想と単語に国見は目を逸らして苦笑いをした。

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