白と黒のコーヒータイム
「自己処理出来るほど強いんです、私は。」

「ほお~。」

子供のような態度をとる国見に名村徹平は眉をあげて感心の声を出した。

国見と同期入社の名村は部署は違えど交流がある。

「俺が出張三昧だった間に…まさか彼氏ができて破局しているとはね。…今回も残念だったな。」

「嫌味か!」

そう言って国見はお通しに手を伸ばして口に放り込んだ。

最後の必要以上に憐れな目で丁寧な言い方は明らかに悪意がある、少なくとも国見にはそう感じる。

休憩所で久々に会った名村からお土産を渡されたのは今日の昼の話、最近どうだと聞かれうっかり失恋したと答えた国見が甘かった。

目を見開いた名村からの発言が「誰に?」だったが、これ以上は時間が取れないという彼の判断で今日の飲みが決まったのだ。

強制的に。

賑やかな店内で半個室のスペースに通され、お通しとビールを手に互いに労いの言葉を交わした次の一手が「何故」だった。

本当、名村と出会って何度目かの尋問タイムだ。

そろそろ付き合いも長くなってきたなと現実逃避を始めそうな国見を名村は強烈なひと言で引き止めた。

「またフラれたんだろ?」

「…はい。」

こう言われては逃げようがない。

次から次へと頼んだ料理が運ばれてくる中、いつものように国見は視線を逸らしてビールに口をつけ名村が店員の対応を全て引き受けていた。

こういうところを見ても余裕のある態度だと目を細めたくなる。

同じ年なのに、同期なのに。
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