生徒に恋しちゃいました
小鳥遊先生は過去にあったトラブルの数々を説明してくれた。

しつこいナンパ、打ち上げでの飲酒、他校生との喧嘩 などなど。

「なるほど〜。当日は気合い入れて、臨みます!!」

「はい、頑張りましょう。 3年生にとっては最後の文化祭、やっぱり楽しい思い出を作ってあげたいですよね」

小鳥遊先生はすごく優しい顔で笑った。

口では気が重いなんて言ってるけど、いい先生だな。

うん、私もD組のみんなに良い思い出を作ってあげられるように精一杯フォローしなきゃ。




今日は大きな仕事も無かったから、いつもより早めに帰宅することにした。
早く帰れる日くらいは自炊しようと思い、駅前のスーパーで食材の買い出しをする。

卵と牛乳と白菜と大根と・・・


「うーん、さすがに買い過ぎたかな・・」

肩にかけた仕事用のA4サイズのトートバックもそこそこの重さなのに、両手にスーパーの大きな袋。

覚悟を決めて歩き出したものの、
重い・・・ そんなに遠くない家が遠く感じる・・・


「何やってんの? 桃子センセイ」

背後からかけられた声と同時に右手が軽くなる。
私が勢いよく振り返ると、結城くんが牛乳と大根の入った重い方の荷物を持って
首をかしげていた。

「結城くん!! 偶然ね。
夕飯の買い出しのつもりがついつい買い過ぎちゃって・・・」

「荷物に引き摺られてるみたいな人がいるなって思って見てたら桃子センセイだった。 こんな重いのばっかり買って・・
センセイ小さいんだから、自分の持てる量考えなよ」

「うっ。そんな正論言われても、もう買っちゃったし」

生徒に呆れられてる先生ってどうなのかしら。
つくづくみっともないなぁ、私。

「家どっち? 近くまで運ぶよ」

結城くんはそう言って、さらりともう片方の荷物も持ってくれる。

その大人っぽい自然な対応に不覚にもときめいてしまった。

・・・この子って高校生のくせに妙に女の子の扱いがうまいのよね。

これは相当もてるんだろうな〜。
共学だったらすごかっただろうな。

「なにぶつぶつ言ってんの?」

薄茶色の綺麗な瞳に覗きこまれて、ますます心臓がはねる。

「いえいえ、自分で持てるから大丈夫です。 大体結城くん何でここにいるの? 寮はこっちじゃないわよね」
























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