青春と呼ぶには僕らはまだ青くない。
駅前の古めかしい喫茶店に入り、俺は言葉を探しながら今、目の前に置かれたばかりの珈琲カップにゆっくりと口を付けた。


「田舎でしょ。こんな店しかないの。でも味は悪くないから。」


自嘲気味に笑いながら言う。


確かに珈琲の味は旨かった。


ゆっくりと珈琲を味わいながら考える。


俺の高校に彼女が実習生としてやってきたのは何年前の事だろうか?


不適切な関係として俺達の事が学校に知れ渡り、教師になる道を諦め彼女はこの地に戻ったのだ。


それ以来の再会だ。


あの頃より時間が立ち、俺もそれなりに大人になったと思うのにこの人を前にすると自分がとてつもなく幼稚に思える。


平然として目の前に座るこの人は俺とこうして再会しても心乱れる様な事はないのだろうか?


「私ね、キミに謝らなくちゃいけない事があるの。」


「なに?」


漸く発した声は自分でも驚くほど掠れていた。


誤魔化したくてまた珈琲を一口飲む。


「さっきのね、妹家族。」


「えっ?」


「私の妹と幼馴染み。そしてあの小さな子が二人の子供ね。」


「幼馴染みって……どういう事?」


あの時、貰った手紙には確かに書いてあった。


側で励ましてくれた幼馴染みと結婚するんだという事が。


「もしかして、妹と取り合ってーーー」


「違う違う、最初から彼は妹と付き合ってるわ。そして私と彼はずっと幼馴染みの関係でしかない。あっ、今は義理の弟か?」


なんて無いことのように話すこの人のこういう所、昔と変わらないな。


「だけど、それ以外の事は本当よ。あの手紙に書いた事。」


駅前の古めかしい喫茶店には当たり前というか他に客は居らず、時折、カウンター内でマスターが新聞をめくる音が響くばかりだ。


「本当にごめん。嘘を吐いて。」


目の前で頭を下げる彼女に別にいいよって言えばいいのに。


もう、昔の事だよって終わらせればいいのに。


俺はそのどちらも選択しない。


何かを期待しているのか、何かを認めさせたいのか俺の心の深い部分にあった感情がーーー


もう終わった筈の感情がこんなにも簡単に溢れ出してくる。


俺はやけに冷静な頭で聞く。


「何で嘘を吐いた?」




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