マエストロとマネージャーと恋と嫉妬と
自分の実力を見せつけたいが為だけの指揮は、奏ちゃんが指摘してくれたお陰で、我に返る事が出来た。


今僕がこのオーケストラに対して何が出来るのか。
邪な考えを捨てた指揮は、時間だけがあっという間に過ぎていく。


それでもやはり途中、楽団員と意見の衝突が出てきた。
僕は焦らず自分の考えを伝え、その楽団員は楽団員で、自分の考えを伝える。
お互いが一致出来る妥協点を探りあう。

「…えーっと…。」


もっと良い案が出せないかと、スコアをパラパラめくっていると、インスペさんが横に来て、

「すみません。既に時間が過ぎてます。」
(仏)

はっとなり、その声に腕時計を見る。

「残念ですが、時間ですね。」(仏)


ギリギリまでやり尽くしたと自負できる僕は、いっそ清々しい気持ちだった。


楽団員が、リハーサル室から出ていく波がおさまった頃に僕も部屋を出ると、奏ちゃんが通路に立っていた。

「お疲れ様でした。」

それに僕は笑顔で応じた。

明日はゲネプロ、本番だ。
< 108 / 288 >

この作品をシェア

pagetop