マエストロとマネージャーと恋と嫉妬と
鍵盤の上を飛び跳ねる様に動く指は、フライパンの上で弾けるポップコーンの様だったし、そのくせ椅子に座る身体は落ち着き払っているのだ。


魔女だ。
そう思った。


母親に読んでもらった絵本に出てくる魔女そのものだと思った。


どうしよう。
この前、嫌いな牛乳を、飲んでないのに飲んだと言って、流し台に捨てたのを知ってるかもしれない。
(最早、なまはげなんかとごっちゃになっていたのだ。)


公演後の父親を訪ねて、いれてもらった楽屋控室にその魔女がいて、怖くて母親のスカートの
影にひたすら隠れていたのを思い出す。
< 118 / 288 >

この作品をシェア

pagetop