マエストロとマネージャーと恋と嫉妬と
好きという感情は無かったと、センパイにぶっちゃけた時。

『……道理でな。だって奏、たまたま俺がクラ
スの女子と昼メシ食ってたの見ても、嫉妬す
らしてなかったもんな。』


あの時、自嘲じみた表情でセンパイはそう言ってたっけ。


嫉妬?今してる。してますよ。

私がまたマエストロの気持ちを断ったら、このピアノを誰か他の人が聴くのかと思うと。


居ても立っても居られません。



さっきから、うつむいたままのマエストロの顔を小さくのぞきこむ。
この部屋に入るまで、あんなに息巻く勢いだった私はどこへいったんだ。
ピアノを一曲聴いただけで、こうも変わってしまうなんて。



「分かりました。ちょうど燕尾服着てますし
教会にでも行きます?飛び込みで。」




【終】













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