マエストロとマネージャーと恋と嫉妬と
「叔父さんの名言が役に立った。」


「おう。心に刻んでおけ。悠平くんは、保護
活動の必要なパンダやトキなんかの動物だと
思え。」


…有史以来の名言です。
アクションに困ったときは、この言葉を基準に
考え、又は心を落ち着かせる事にしている。


新幹線を降りて、改札口までたどり着くのが迷ってしまうとか、燕尾服を忘れるとか、飲んでたコーヒーをこぼして、楽譜の大事な書き込みが分からなくなったとか、指揮者としてというより、一人の大人としてどうなの?と思ってしまう。


だからといって梁瀬さんを邪険に扱う事は出来ない。
梁瀬さんは、うちの音楽事務所の稼ぎ頭なのだ
から。


梁瀬さんの恩師と、うちの父が懇意だというのでこの音楽事務所を紹介されたらしいが、そういう経緯でもなければ、こんな中堅音楽事務所ではなく、もっと大手に所属してもいいような人なのだ。


それゆえ取り扱いには細心の注意を払わなければならない。
あれだけ頼りない人物なら尚更だ。
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