マエストロとマネージャーと恋と嫉妬と
「奏。この前は大変だったらしいな。」


遅まきながら、今年入った新入社員歓迎の為の
食事会の席の事だった。
といっても、新入社員は私だけなのだが。


社長という立場にも拘らず、何処から聞き付けたのかこういう場に必ず顔を出すのは、相変わらずだなぁと、感心する。


私が小学生の時、運動会で一番前の列で大声を上げて応援してたのを思い出す。
こういう余りにも軽いフットワークのお陰か、
奥さんとは離婚しているのだ。


「どうなんだろ。あれで正しかった?」


「難しい判断させたな。良かったんだよ、あ
れで。あのまま次の曲まで指揮をさせて、何
かあったら。」


叔父さんがそう言ってくれたおかげで、ほっと
出来る。


「ピアノでも弾けなくなろうものなら、それ
はそれで困るし。」


「そっか。そうだね。」


曲の構造を理解する為に、指揮者であろうとピアノで音を拾ってみることは欠かせない。
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