疑似恋愛

1節

「トモコ」




私を呼ぶ親友の声。




振り返ると、笑顔の親友がいた。




「あさか!」




「トモコ…生きて」





歩いてるのに。確かに進んでるのに。





親友の元へ、たどり着けない。






必死に手を伸ばす。その分だけ親友の姿が
遠ざかる。「何で!?どうして!?」



「トモコ、元気でね。幸せに生きて。」





「や、やだ…あさか…。」




「私を呼んじゃあだめだよ。あ、でも無理だろうなぁ。トモコ、泣き虫だもん。」





「あさか、行かないで!一緒に…!」





生きよう。…それは声にならなかった。





声が、出ない。あさか!あさか…!






「…ゼッタイ、死なないで。トモコ。」






にっこり笑うあさかの姿が遠くなる。






「バイバイ、トモコ。」









「…ぁさ…」







私の声は掠れていた。




横を向くと、あさかがいた。





あさかの白い肌が、さらに白く見えた。





ぞっとするほどの血が、あさかの身体を覆っていた。





「…ぁさ、あさか!!」






急速に溢れ出てくる記憶。






猫を追いかけて飛び出すあさか。






追いかける私。目の前にはトラック。






同時に物凄い衝撃と、舞い上がるあさかの姿。





私の身体も浮き上がって、地面に叩きつけられた。






目の前が真っ白になった。「あさか!!あさか!!しっかりして!」







私は顔を両手で覆った。涙が出てくる。






「あさか…!どうしてこんな事に…。」






あの不思議な夢の中で、あさかに別れを告げられて。





何となく。何となくだけど分かった。






それでも。助かって…。






そう祈るのは、間違っているかな?





「お願い、あさか…!生きて…!」


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