元通りになんてできない
思案

泣き止んだ鷹山さんが、部屋に入るのを確認して、俺は帰った。

鷹山さんは、ワイシャツをまた汚してしまって、ごめんなさい、と言った。
確かに俺のワイシャツ、胸の辺りは濡れてるし、ファンデーションもついていた。

「気にしないでください」

「幸元君はすぐそう言うけど…、落ちないのよ、中々」

「あれ?知らないですか?ファンデーションを落とすには、顔と同じですよ?
クレンジングで予め洗って落として洗濯すれば、いけますよ?
あ、こんな事知ってるからって、色んな事、勝手に想像しないでくださいよ?
単なる知恵袋ですから」

「へえ、そうなの?」

笑った顔が見られたから、少しホッとした。


サンドイッチだけでも駄目だけど、食べてくれないよりはいい。
元々の体形は解らないが、抱きしめた感覚…、細かったから。きっと、痩せたことには違いないだろう。ちゃんと、食べて欲しい。
知里ちゃんが居なくなってから、きっとまともに食べてないんだろう。
今日、話したからといって、これからの寂しさの解決にはならないけど、一人で居ることに少しずつ慣れていくしかないのだろう。

色々あるんだよな、きっと。子を持つ親にしか解らないモノ。しかも、可愛い盛りの子供。

同じような年頃の子供を目にしたり、他人が呼ぶお母さんという声に反応したり…、日常から突然居なくなるんだ…。
…簡単な訳がない。
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