元通りになんてできない


「何をもたもたしているの?しっかりしなさい。
ポーッとして、うかうかしてると、誰かにあっさりさらわれてしまうわよ?
猛がしないなら、母さんがプロポーズするから」

「…はぁ?」

ぶっ飛び過ぎだ…。

「ねえ、お父さん。お父さんだって薫さん好きでしょ?」

「んんん。ああ、話を簡単に聞いただけだが、芯の強いしっかりした女性だと思うよ。随分、大変な事もあったはずなんだ。子育ては何が起こるか解らないものだ。仕事だってそうだ。ストレスも溜まる。…わしが嫁さんに欲しいくらいだ」

「ほらほら猛。あんたより頼りがいのあるお父さんに取られるわよ?」

何を言ってるんだ、うちの親は、…揃いも揃って。

「いやいや。有り得ないし、ていうか、お袋がそれ言う?」

「フフフ」

「薫さん?」

「ごめんなさい。掛け合いが面白くて、つい」

涙を拭きながら笑った。…はぁ。家の親、…楽天的なのかな。


「明日休みでしょ?今日、泊まっていきなさい、猛。薫さんもいいでしょ?
難しい話はもうしないわ。ね?いいでしょ?」

「でも、どうしましょう…、困りました。何も持って来て無いですし」

「買い物しに行って来なさい、ね?お化粧品やら、色々必要なモノ。
私の物って訳にもいかないから。
猛、出掛けて来なさい。夜まで帰らなくていいから。ご飯作って待ってるから」
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