元通りになんてできない


「妊娠の事は高野部長にはもう報告しといたからね?…前の時みたいに、遅く報告して迷惑をかけてはいけないから」

あ、え…俺に一番に言ってくれたんじゃなかったんだ…。

「部長が、幸元君に頑張れって、ハッパかけとけって言ってたよ?」

何だよ、それ…。

「猛君?聞いてる?」

「え?あ、うん、聞いてます…」

「何かあったら部長が言って来いって言ってたから、話しておくと気持ちが楽ね。こういうこと、余計内緒はやっぱりしんどいモノね。
特にこんな…病気じゃないけど、体がしんどくなっていく事は、私、知ってもらってた方が助かるし」

俺よりも部長が頼りなのか…。

「幸元君?どうしたの?」

「…薫さん、俺…、ちょっと戻ります、実は仕事残ってるの抜けて来て、ちょっと、会社戻ります」

「えっ?嘘。ご飯は?」

首を振った。

「…すみません、食べかけちゃって」

「それはいいの。お腹空かない?大丈夫?後でこっちに戻るでしょ?」

「…」

「猛君?」

「いや、…遅くなると思うんで、今日は俺ん家に帰ります。じゃあ、戻ります」

鞄を掴んで玄関から慌てて出た。

……最低だ俺。ばれるような嘘をついた。こんな嬉しい日に…。部長にヤキモチ妬いて、不機嫌になって…。これ以上、八つ当たりして酷い事言ったら大変だ…。ごめん薫さん、今日は一緒に居ない方がいいです。

「あ、ちょっと、猛君待って…」

小走りで後を追った。
……ズキッ、あっ…あ、あ、な、に?痛、ぃ、痛い…。しゃがみこんだ。待って、猛君。
…猛、君…、何だかお腹が、変なの、待っ、て。
お願い…、助、け、て…。
< 148 / 191 >

この作品をシェア

pagetop