元通りになんてできない
「妊娠の事は高野部長にはもう報告しといたからね?…前の時みたいに、遅く報告して迷惑をかけてはいけないから」
あ、え…俺に一番に言ってくれたんじゃなかったんだ…。
「部長が、幸元君に頑張れって、ハッパかけとけって言ってたよ?」
何だよ、それ…。
「猛君?聞いてる?」
「え?あ、うん、聞いてます…」
「何かあったら部長が言って来いって言ってたから、話しておくと気持ちが楽ね。こういうこと、余計内緒はやっぱりしんどいモノね。
特にこんな…病気じゃないけど、体がしんどくなっていく事は、私、知ってもらってた方が助かるし」
俺よりも部長が頼りなのか…。
「幸元君?どうしたの?」
「…薫さん、俺…、ちょっと戻ります、実は仕事残ってるの抜けて来て、ちょっと、会社戻ります」
「えっ?嘘。ご飯は?」
首を振った。
「…すみません、食べかけちゃって」
「それはいいの。お腹空かない?大丈夫?後でこっちに戻るでしょ?」
「…」
「猛君?」
「いや、…遅くなると思うんで、今日は俺ん家に帰ります。じゃあ、戻ります」
鞄を掴んで玄関から慌てて出た。
……最低だ俺。ばれるような嘘をついた。こんな嬉しい日に…。部長にヤキモチ妬いて、不機嫌になって…。これ以上、八つ当たりして酷い事言ったら大変だ…。ごめん薫さん、今日は一緒に居ない方がいいです。
「あ、ちょっと、猛君待って…」
小走りで後を追った。
……ズキッ、あっ…あ、あ、な、に?痛、ぃ、痛い…。しゃがみこんだ。待って、猛君。
…猛、君…、何だかお腹が、変なの、待っ、て。
お願い…、助、け、て…。