元通りになんてできない

さあ、作りますか。
他人に食べてもらう事を思えば、普段より気合いの入ったモノをと普通はなる。
でも、そこは、敢えて普通通りにする事にした。
その方が、家庭の、普通の毎日が解ってもらえそうな気がしたから。

予め、メニューは決まっていたし。
休みの日に作り置き出来るモノは作って冷凍しておくようにしている。
ミートボール。ミニハンバーグ。これは夕飯を作る時、種を多く作り、お弁当用に別に作っておく。メインをこうして作っておけば凄く楽だ。

ミートボールにケチャップ味のタレを絡め冷ましておく。玉子焼きは今日は刻んだミックス野菜を入れて焼く。味は甘めだ。アスパラ、ブロッコリーはさっと茹でる。
知里の好きな南瓜、これは緑の皮の部分は全部ハート模様に小さくくり抜いてある。
幸元君、誤解のないようにね。これは知里の為のいつもの模様だからね。

ご飯を入れて、冷まして置いた三個のお弁当箱を並べ、どんどん詰めていった。

信君、ごめんね。人のお弁当作ったりして。
許可を取りたくても取れないまま作ってる罪悪感がある。
罪悪感?
幸元君が男の人だからだな…。何となく。ごめんね。

この為にお弁当箱を新しく準備するのもと思い、お弁当箱になりそうな色で、後でも使えそうな、それなりのサイズの容器を100円ショップで買ってきていた。
これだと、返して貰わなくても気にならない。

…よし、出来た!

同時進行の朝ご飯も出来たし…。

「…知里〜、起きようか〜知里〜?」

トントン肩の辺りを軽く叩いて起こす。

「おはよう」

「……おはよう」

「さあ、顔洗ってお着替えして、ご飯よ」

「う、ん…」

トコトコ歩く後ろ姿が何とも……可愛くて堪らない~。

「…信君、おはよう。今日も元気だよ。…頑張るからね」

写真に話し掛けた。
< 17 / 191 >

この作品をシェア

pagetop