元通りになんてできない


「ぁ、……部長…」

「…紳一郎だ」

穏やかで、だけど艶っぽい表情の部長は、私の耳にそう囁き、食んだ。耳たぶを甘噛みされ、声が洩れる。ビリビリとした震えが身体に走った。首を食まれた。触れる唇の刺激に首を竦めてしまう。あっ…んぁ…。

「鷹山…」

ブラウスのボタンを一つ一つ外しながら、唇が首筋から下へと這っていく。唇が…、柔らかい。
…時々食む。あっ。肩紐をずらしながら肩に口づけられた…。背中に腕を入れホックを外すとずり上げられた。ぁ、いや…。恥ずかしくて咄嗟に交差して隠そうとする腕を掴まれた。
押さえられて指を絡められた。強くなる鼓動と共に胸が上下する。

「……綺麗だ。…隠すな…」

露わにされたそこに唇が触れた。あ…。与えられる刺激、耳元への囁きに身体が反応する。
開けたブラウスもブラも取り去られた。スカートも下着も…。
大きな手、長い指…、唇、…総てに翻弄される…。はぁ…ぁ…ぁ。唇が重ねられる。塞がれる…。行き場の無い漏れる声、…飲み込まれる。
部長の身体の重みを感じながら、背中に腕を回した。

「…構わないんだな…鷹山…」

頷いた。

「…薫…」

「部、長……ぁ…」

「部長は…、止めてくれ…。何だ、か…、悪い事…、ハァ、してる気になる…」

「紳一郎さん、あっ…、やっ、ぁ…」

「ハァ、そうだ…、紳一郎だ…、薫…」




少し眠っていた。
古いガラス窓の向こうから、淡い月の光が照らしていた。
部長は瞼を閉じていた。

「…起きたのか?」

厚く逞しい胸に身を預けていた私は、部長の腕の中で頷いた。
身体に響く部長の声に心が安らぐのを感じた。
頭を優しく撫でられ、背中に腕を回し抱き寄せられた。

「…鷹山…、俺はまだはっきり聞いてない…。良かったのか?こうなって」

髪を撫でながら問う。

「…はい。欲しかったモノ、沢山頂きました…」
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