元通りになんてできない


「おかあさん、なおる?」

知里は心配そうに覗き込んでいた。

「大丈夫、ここが広がって取れただけだから、ほらここ。ね?だから、ここに入れて、ギューッて挟めば、ほら、直った!」

「なおった、なおった、たけるのうさたんがなおった」

ズキッ…。こんな時、子供の無邪気さは残酷ね。


「知里、ご飯何しようか?」

「ハンバーグにたまごのせたやつ」

「解った」

あと何しようかな…。
なすとじゃがいもで簡単なグラタン作ろう。チーズも好きだし。

知里は絵を描いている。
ハンバーグを丸めながら覗いて見た。

まだ上手くないけど何と無く動物を描いているような。うっ、これは…、中々難解な…、知里画伯の絵だ。

「知里?なに描いてるの?」

「レッサーパンダ!」

ほ、ほう…。
…中々。

「そう、上手、上手よ」

「ちがった。くま!」

…。褒めた私の立場は…。

「たける」

えっ。

「これ、たける。ねえ、おかあさん、たける、じょうずにかけた?」

「うん、上手だよ」

「あと、おかあさんもかくからね」

「…うん、有難う。…そうだ、美人さんに描いてよね」

「うん!おかあさん、びじんさん」
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