元通りになんてできない

気のせいではないと思う。最近鷹山さんはどんどん元気が無くなって来ている。
そんな気配、本人は出しているつもりは無いだろうが、解る人には解ると思う。

何かあったのは間違いないだろう。
俺が聞いても話してくれるだろうか…。
そもそも、相談事、わざわざ俺には打ち明けないか…。

朝の給湯室では話せる事でも無いかも知れない。



カンッ…

何だ?…非常階段か?

通路に居た俺はゆっくりドアを開けた。


……。鷹山さんだ…。

手摺りに腕をかけ伏せ気味に遠くを見ていた。

とてもじゃないが、声は掛けられない。そんな雰囲気だ。
気付かれないように静かにドアを閉めた。……つもりだった。

「誰?」

しまった…。バレたか。


「…すいません、俺です」

「幸元君…。別に、謝らなくても…。此処は私専用の場所じゃ無いんだから」

「いや、…でも。何だか、すいません。邪魔してしまって…」

「あ…ごめんね。…気を遣わせちゃったのね…邪魔とか、気を遣わないで。もう入るから。どうぞ?」

私は戻ろうとドアと幸元君の隙間を擦り抜けようとした。


「待って、…待ってください」

腕を取られた。
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