元通りになんてできない

「…俺じゃ駄目ですか?少しでも、話し相手になれませんか?」

「幸元君…」

「余計な事でした…、勝手にですが…、何か悩んでいるのではないかと思ったんです。最近元気が無いみたいだから…」

「…」

「…すいませんでした」

俺は掴んだ腕から手を離した。

「…ありがと」

それだけ小さく言うと鷹山さんは戻って行った。

ごめんね…有難う。小さく聞こえた気がした。

入れ代わり、俺は階段に居た。
吸ってはいけない煙草に火を点けた。

手摺りに凭れながら、高くて淡い青空を仰いだ。
点在する薄い雲…、少しずつ形を変えて流れていく。

小さい頃は、あの動物に似ているだとか、必死に形を探して無理やり言ってたな…。
すぐ変わっちまったけどな…。

煙を吐き出す。
消えてなくなる…。

今日の空の色も、雲の形も、今しか見えないモノ。
明日見たくても、同じモノは二度と見られないんだよな…。
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