白雪と福嶋のきょり
友人にどれだけ耳元で騒がれても探索に付き合わなかった理由。

「あ、あの…福嶋くん。ちょっと、いい?」

極力ホテル内を出歩きたくない理由。

「ここでいい?」
「え…。ここはちょっと…。」

インターホンに気づかずにいられるかもしれないと思ったのも睡眠を選んだ一つの理由。

「ていうか今じゃなくて…夕飯の後…。」

数か月前が第一ピークだった。三年前の修学旅行でも同じ事があった。毎年文化祭や体育祭などの行事ごとの前も同様だった。

「ここに、来てくださいっ!」

勢いよく突き出された手が掴んでいるパステル色のメモ。

それを受け取らずに眺めていると、耐えられなくなった様子の彼女はメモから手を離し。

「待ってるからっ!」

一度も目を此方に向ける事もなく、男子生徒が行きかう廊下を走り去っていった。


今年もまた、第二のピークが始まった。
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