白雪と福嶋のきょり
「当然だ。そこじゃない。」

けれどはるか先生が求めていたのはそういう事ではなかったようで。

「え?」
「…質問の仕方変える。」

一つ溜息にも似た息を吐き出した後に。

「お前、負の感情ちゃんと動いた事あるか?」

聞き慣れない単語を静謐に落とした。

「負の感情?」

はるか先生が落とした単語の意味がよく分からなくて、ただはるか先生を見つめる時間が過ぎるばかり。

多分はるか先生は、私が負の感情が何なのか分からないと初めから分かっていたんだと思う。

「思ってる事が言えない。理由もなく身体が痛む。相手の気持ちが見えずに思ってもない事を言ってしまう。」

何処かこの空間ではない遠くを見る様な目で。

「したくない。してはいけない。~なのに。苦しい。怖い。痛い。しんどい。」

夜に隠そうと思えばできるのにそれを隠そうともせず、とても優しい目で。

「相手が苦しむと分かっていても自分の事で悩んで欲しい。」

私たち生徒が知らない、目で。

「そういう、負の感情。」

その先にある何かだけを捉える様な目で、教えてくれた。
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